名古屋で事業再生に特化した経営コンサルティングを行う

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経営ブログ

政府は、労働者の時間当りの最低賃金を、現状の約1,000円を「1,500円」に上げようとしています。 従業員の給与を上げる施策として、中小企業が取組む内容を3回に分けて紹介します。

第1回:経営効率の改善と業務の見直し(前回)

業務プロセスの無駄を削減し、生産性を高めることで、コストの削減を図り、その分を賃金引き上げに撤退する方法について解説します。

第2回:新たな収益源の発掘とクロスセル戦略(今回)

新しい商品やサービスの開発、顧客様への追加提案(クロスセル)売上を増やし、従業員の給与アップを目指す方法を紹介します。

3回:従業員のスキル向上とキャリアアップの支援(次回)

中小企業が従業員のスキルを高め、生産性を向上させることで、賃金を実現する視点です。 特に人材育成プログラムや社内研修、キャリアアップ育成支援、会社全体の付加価値を高める方法について説明します。

 

新たな収益源の発掘とクロスセル戦略

従業員の給与を上げる方策として、中小企業が積極的に取り組む戦略の一つが収益源の拡大です。売上を増やし、利益を増やすことができれば、従業員の給与に還元されやすくなります。

これまでのビジネスの強化や新規顧客の開拓に加え、既存顧客へのクロスセル(関連商品・サービスの提案)を活用して収益を増やす方法について解説します。

 

1 既存顧客へのクロスセルで売上を拡大

クロスセルとは、お客様に対して関連商品サービスを提案することで、お客様の満足度を上げる方法です。例えば、製品Aを購入しているお客様に、互換の良い製品Bや、メンテナンスサービスを追加することです。すでに商品やサービスに対する信頼があるため、クロスセルは新規顧客開拓よりも効率的であり、比較的低コストで売上を伸ばすことができます。

クロスセルを行う際のポイントとして、顧客のニーズに合った提案をすることが重要です。顧客が興味を持たない提案をしてしまうと、逆に信頼を損なう可能性があるため、購入履歴や顧客情報を分析して、適切なタイミングで必要な商品やサービスを提供することが成功の鍵です。

 

2 既存商品の付加価値を高める

既存の商品やサービスに、競合先にはない付加価値を付けることも有効な戦略です。 同様に、通常の商品に限定特典やアフターサポートを付けることで、競争力を高め、顧客により高い価格で提供できるこれにより、自社の売上を伸ばすことができ、利益率を改善することが可能です。

具体的な施策として、パーソナライズされたサービスの提供や、定期的なメンテナンスサービスの追加が考えられます。また、商品を提供するやサービスに関する教育コンテンツ(例:使い方や活用法セミナーやウェブ講座)を提供することで、顧客満足度を向上させるとともに、リピーターや高額な商品の購入につながる可能性が期待できます。

 

3 新規市場の開拓と商品多様の選択肢  

収益源を増やすためには、新しい市場や顧客層への展開が重要です。例えば、これまで地域限定でサービスを提供していた場合、オンラインでの販売や、配達エリアを拡大することで、新たにな顧客層にリーチできるようになります。

また、これまで提供していた商品やサービスの対象層を拡大し、新たな層に向けて商品の改良やマーケティングを行うことも効果的です。特定の有望な業界に絞ったプロモーションなどを行い、対象を広げることで新たな顧客を獲得することが可能です。

 

4 サブスクリプションモデルの導入

安定した収益を上げるための方法として、サブスクリプションモデル(定期購読サービス)の導入も有効です。商品やサービスを一定期間ごとに提供することで、継続的な売上が期待でき、キャッシュフローの安定化が見込めます。サブスクリプションモデルの募集は、顧客の継続率が見込まれ、ライフタイムバリューが向上する点にあります。

定期的に消費する商品の場合、サブスクリプションモデルを導入することで顧客の利便性も向上し、継続的な利用が期待できます。また、毎月の会員限定の特典をつけることで、サブスクユーザーにとって魅力的なサービスを提供し、リピート率を高めることができます。

 

5 アライアンス(提携)による新たな収益源の確保

競合先を含めて関連企業との業務提携も、新たな収益を生み出すための有効な手段です。自社の強みと提携先の資源を組み合わせて、独自では困難だった新規事業やサービス展開が可能になります。提携先の企業と共同でプロモーションを行ったり、商品をセットで販売するなど、今後シナジーを生む形でのアライアンスが考えられます。

特に中小企業では、リソースの限界があるため、提携による新しい販売チャネルを構築することは効果的です。提携相手の顧客基盤を活用し、自社商品の販路を広げることができれば、効率的に収益を増加させることが期待できます。

 

まとめ

これらの顧客に対するクロスセルや、新たな市場やターゲット層の開拓、サブスクリプションモデルの導入など、多様性を取り入れることで、売上増加と安定的な収益を目指すことが可能です。中小企業が収益を増やし、従業員の給与アップにつなげるためには、柔軟な発想で新たな収益機会を見つけ出し、積極的に実行していくことが求められます。

 

次回の記事では、従業員のスキル向上とキャリアアップ支援により生産性を引き上げ、その結果、給与を多く支払う方法についてご紹介します。

 

政府は、労働者の時間当りの最低賃金を、現状の約1,000円を「1,500円」に上げようとしています。 従業員の給与を上げる施策として、中小企業が取組む内容を3回に分けて紹介します。

第1回:経営効率の改善と業務の見直し(今回)

業務プロセスの無駄を削減し、生産性を高めることで、コストの削減を図り、その分を賃金引き上げに撤退する方法について解説します。

2回:新たな収益源の発掘とクロスセル戦略(次回)

新しい商品やサービスの開発、顧客様への追加提案(クロスセル)売上を増やし、従業員の給与アップを目指す方法を紹介します。

3回:従業員のスキル向上とキャリアアップの支援

中小企業が従業員のスキルを高め、生産性を向上させることで、賃金を実現する視点です。 特に人材育成プログラムや社内研修、キャリアアップ育成支援、会社全体の付加価値を高める方法について説明します。

経営効率の改善と業務の見直し

従業員の給与を上げるためには経営効率を高めることが必要です。本記事では、経営効率を改善し、業務を見直すための具体的な考え方についてご紹介します。

1 業務プロセスの可視化と改善

まずは、現在の業務プロセスを可視化することが、効率改善の始まりです。日々の業務を図式にしてみると、意外にも無駄な工程や重複する作業が浮き上がることがあります。手作業で行っている事務作業を自動化することで、時間を大幅に節約できる可能性があります。

また、社内コミュニケーションの仕組みを見直すことも重要です。 社内の情報共有がスムーズにならないと、仕事が二度手間になり、時間も無駄になります。情報共有の仕組みの導入や、週に一度の定例会議をはじめ、情報が一元管理されるような環境づくりを進めましょう。

2 デジタルツールの活用

業務効率化に関しては、ITツールの導入が非常に効果的です。現在、会計や在庫管理、顧客管理など、多くの分野で手軽に利用できるクラウド型の業務支援ツールが登場しています。帳簿簿や経費精算を手作業で行っている場合には、クラウド会計ソフトを導入するだけで手間を大幅に削減できます。

さらに、タスク管理やプロジェクト管理を行うためのツールも多くあります。これらのツールを使うことで、業務進行状況が可視化され、作業の優先順位や効率が向上します。ツールの導入には一定のコストがかかることもありますが、長期的な生産性向上とコスト削減の効果を考えると投資する価値は十分あります。

3 外注と業務のアウトソーシング

日常的な業務の中には、外部に委託した方が効率的なものも少なくありません。例えば、経理や給与計算などの業務は、専門のサービスにアウトソーシングすることで、自社のリソースを収益が見込めるコアの業務に集中させることができます。また、ITサポートやウェブサイトの管理なども外部に依頼することで、従業員が専門分野以外の業務に時間を割かなくても済みます。

アウトソーシングの時間は、必要な時だけ依頼できるため、コストを抑えながら効率的に業務を進められる点にあります。 さらに、専門家によるサポートを受けることで、より高品質なサービスを提供できるため、顧客満足度の向上にもつながります。

4 無駄なコストの見直し

最後に、経費の見直しも重要な要素です。電気や通信費、備品の調達費用など、日常的な経費は意識して削減に取組まないと徐々に増えていきます。例えば、照明をLEDに変更する、電力プランを見直し、オフィスのスペースを効率的に活用するなど、小さな取り組みが積み重なり、結果的に大きなコスト削減につながります。

また、仕入れ先と商品(製品)仕様、梱包仕様、運送方等等の見直しを行い、コスト削減の交渉をすることも検討しましょう。無駄なコストを削減することで、その分を従業員の給与に充当することが可能になります。

 

まとめ

経営効率の改善と業務の見直しは、一朝一夕には完了しないかもしれませんが、日々の業務改善が少しずつ行われることで、確かな成果を生み出すことが期待できます。従業員の給与を上げるためには、無駄を省き、効率を上げていくことが必要です。 効率化により生まれた利益を従業員に還元することで、企業全体の成長が加速されます。

次回の記事では、収益源の発掘やクロスセル戦略を活用し、売上を増やして給与アップを目指す方法についてお伝えします。

 

事業再生の中でのオペレーションの重要性

現在、事業パートナーグループの「事業再生の取り組み」の中で「オペレーションの改善」は重要な役割を担っています。その理由としては、早期に・確実に利益を増やすことができるからです。

商品開発や販売戦略も売上・利益を向上させる有効な施策ですが、効果が出るまでに時間がかかる場合もあります。

その点、オペレーションの改善は、内容によっては、改善効果が早く得られます。

下図は、事業再生に取り組んだ企業でのオペレーション改善策の効果の一例を示しています。月単位で改善効果が現れていることがわかると思います。

*本図は、後述の研修会の資料から転記

 

実施の内容を研修会で

「事業パートナーグループ」では、「経営指導プロ養成研修会」(70時間、10日間)を行っています。講師は、事業パートナーグループで請負った「事業再生」案件に取り組んでいる専門家で、経験した事例を含めたより実践的な内容になっています。

第9期は5月12日に開講します。

 

 

1月11日(土)に第8期・第5回の「オペレーション」の講義が行われました。その中のエッセンスを紹介します。

<講師の紹介>

金谷 貴生 経営士

2012年 ソニー株式会社退職

    在職時には生産技術部門で、主に工場の現場改善として、

    「生産性向上」「品質向上」「コスト低減」活動を主導。

2013年 経営コンサルタントとして独立

    株式会社 ケーティーシー 代表取締役

2014年 株式会社 従心会倶楽部 

    「実践経営塾」講師、企業内研修を受託

2015年 株式会社 事業パートナーにて経営改善活動開始

<主な経営改善実績>

 

事業再生が必要な企業のオペレーション

事業再生が必要な中小企業は、時間とお金が限られています。そのために次の取り組み方が必要です。

(1)迅速に・的確に状況を把握する

事業再生中の企業は、早く効果を出さないとどんどん状況が悪化していきます。そのためには、現状を迅速に・的確に把握する必要があります。

企業の概要を事前に把握した後、現場での調査を行います。

(2)費用をかけない対策を立案

当然、事業再生中の企業には新規に投資するお金がありません。

そのため、設備投資を伴う対策ではなく、「工程改善」「作業改善」をまず行います。設備の改善が必要な場合は、少ない費用で実施できるようにします。

(3)経営トップの意識改革を促す

立案した対策を実施するためには、従業員全員の意識を改善に向けるには、経営トップの意識改革が必要です。

経営トップの中には、従来のやり方に固執する方もいらっしゃいますが、「現状分析の数値と改善予測数値」を示して納得してもらいます。

(4)現場の責任者・担当者とともに改善活動

現場にも目的や実施内容を伝え、納得してもらい、活動を実施します。改善結果の「見える化」を行い、関係する方々に効果を認識してもらい、やる気と達成感を感じられるように進めます。

 

 

オペレーション改善の重要ポイント

講義の中で示された金谷講師が指導を受けた「山田日登志先生」の教えを紹介します。

金谷講師の「オペレーションの改善」は、山田先生の教えがベースになっています。

(ウィキペディアより)

山田 日登志(やまだ ひとし、1939年~ )は、生産管理を専門とするコンサルタント。PEC産業教育センター所長。セル生産方式の発案者。生産現場のムダを排除する「ムダとり」の生みの親とされる。

1 3大ムダをなくす

(1) 運搬のムダ

運んでお金をもらえるのは運送会社だけ

(2) 停滞のムダ

溜めてお金をもらえるのは倉庫会社だけ

(3)手待ち(動作)のムダ

手待ちを見える化することが重要

<ムダを見るときの考え方>

顧客と企業の両方に必要なもの以外は「ムダ」である。企業の活動の中では、顧客にとって価値のないものに注力する場合もあり、よく考える必要があります。

*金谷講師の資料から

 

2 整理・整頓

山田先生は、5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の中で、「整理・整頓」に注力するように指導しています。

整理とは、必要なものと不要なものを分け、不要なものは捨てること。

整理しても捨てることができない会社は多い

整頓とは、必要な時に必要なものがすぐに取り出せること。

整列させて見栄えだけよくしている会社は多い

大事なのは、整理整頓に基づく「整流化」

整流化:モノや情報が淀みなく流れている状態

 

事業再生だけでなく業績の向上に

事業パートナーグループでは、オペレーションの改善は「事業再生」の中で行っていますが、現状の経営状態に資金上に問題がない企業で実施することも可能です。

この場合、再生企業では難しい、設備投資を伴う改善にも取り組むことができ、より大きな効果が出る可能性があります。

事業パートナーグループの「オペレーションの改善」は、製造現場だけでなく、様々な業種、職場で展開することができます。

現状を効果的に変革したいと考えている企業の方はぜひご連絡下さい。

連絡先はこちら

また、上記に示した「経営指導プロ養成講座」は、5月開講で第9期のプログラムを実施します。その中で、今回の「オペレーション」も組み込みますので、ぜひ、受講をご検討下さい。

 

コロナ禍の影響、原材料費・人件費の高騰、人手不足、後継者不在など経営環境が悪化している中で、事業の継続が難しくなっている企業が増えてきています。

事業パートナーグループにも、事業再生や廃業の相談が増えています。

これらの相談の中の幾つかを紹介していきます。

経営課題をお持ちの企業の方々に「事業再生」や「先の姿が見える廃業」に向けた参考になれば幸いです。

企業の経営支援を行っている士業・コンサルタントで、解決が難しい案件がありましたらご相談を承ります。連携して対応することも可能です。

事業再生相談 銀行口座の差押え対応

会社の現状

・社長の年齢:63 歳

・業種:自動車修理業 

売上:1 . 2 億円 ・ 債務超過:△5,000 万円

・現・預金残高:600 万円  ・借入残高:4,000 万円

・従業員:6 名

相談内容

国税及び社会保険料の滞納額が多額で、銀行口座の差押えを受けた。今後の経営をどのようにしたら良いか。

アドバイス

(1) まずは自社の事業の将来性があるかを判断する

つまり、今後の利益を出すことが可能かどうか。

(2) 国税と社会保険料の滞納に関する留意点

・新たに発生する納税分は必ず納税すること。
・既に延滞している分は少額納税で交渉する。
 *地域の所轄によっても異なるが、役所としては前向きに対応してくれると思われる。

(3) 廃業を決断した場合の留意点

・銀行借入残高に関しては社長が連帯保証人になっていることが多い。

そのために廃業時には保証協会や日本政策金融公庫と返済の交渉をする。

*現在は保証協会が大部分の銀行借入の債務保証をしているため

(4) 従業員への“解雇通知”は最低1ヶ月前にすること

 

(5)第二会社への移行に関しては専門的知識が必要なために弊社までご連絡を

経営上で何か問題が発生しても必ず解決の道はあります。
諦めずに考えてください。
それでも、適切な答えが出ない時は、私どもにご相談ください。

 

再生?廃業?第二会社?

依頼者の社⾧と奥様と⾧男の 3 名で弊社に経営相談に来られました。

現在の会社の状況

・業種は製造業

・営業利益:直近で赤字 2,000 万円

・売上は 5 億円

・社員 23 名(パートを含む)

・粗利率 8%

・借入金 4 億円、毎月の元金返済額 320 万円

社⾧ 68 歳、奥様 65 歳(経理担当)、⾧男 41 歳(営業部⾧)、⾧女は既婚、次男は他社勤

自宅の状況

・一戸建住宅 ・時価 3000 万円。保証人である社⾧所有

・住宅ローン: 普通抵当設定 3000 万円

・現在の借入残 2000 万円

相談内容

1  現在、資金繰りに窮している。新たに銀行に借入を依頼したいが、その方法を教えても
らいたい。

2 リスケジュール(リスケ)をした場合、その後の借入は不可能か?

3 会社の経営が苦しいので金利を下げてもらいたいが、どのように交渉したら良いか?

4 今後、現在の事業を継続すべきかを悩んでいる。

アドバイス

・会社の事業、労務、金融等の正確な会社の現状を把握するために 2 ヶ月間かけて調査を行
う。その後、具体的な実行計画を作成して実行する。

自宅の保全をする(住み続けられるようにする)。方法はセール&リースバックを活用。

・会社調査で判明した窮境原因の改善を 6 ヶ月以内におこない、赤字から黒字への転換を計る。

・会社調査で判明した現状を基に資金繰りが回る具体的な方法を実行する。リスケジュール
代位弁済を行う。

・新規の借入は考えない。返済に無理がある。

・現状での銀行への金利削減交渉は不可能なのでしない。

・会社調査結果を基にして「再生」「廃業」「第二会社」のいずれかを選択する。

<ポイント>

1 「事業再生」の場合は 3 年間で銀行の納得できる経営状況にする。

「廃業」の場合は「私的整理」をして、自宅保全(自宅に住み続けられるようにするという
こと)と銀行債務は保証人一人の収入範囲の返済額にとどめる

「第二会社」の場合には無借金でのスタートとなる。

以上で 3 時間の説明を終える。3 名の相談者は来社の時とはうって変わって笑顔でお帰りに
なった!!

 

経営上で何か問題が発生しても必ず解決の道はあります。
諦めずに考えてください。
それでも、適切な答えが出ない時は、私どもにご相談ください。

 

事業再編を行う手法

事業譲渡後に倒産する手法は、いわゆる「不良債務を切り離す」形で事業再編を行う方法の一つです。この手法は、事業の存続や再建を目指しつつ、過剰な負債を切り離すことが目的とされています。しかし、適切に行わないと法的リスクが発生するため、以下のような方法と注意点があります。

実施方法

1 事業譲渡の実施:

・まず、譲渡する会社は、健全な事業や資産を第三者または関連会社に譲渡します。ここで譲渡されるのは「事業そのもの」や「資産」であり、負債は譲渡の対象から外されることが多いです。

・具体的には、工場や店舗、商標、顧客リストなどの有形・無形資産を新しい会社へ移転します。

2 譲渡後に旧会社の倒産手続き:

・事業譲渡後、譲渡元の会社は残った負債のみを抱えた状態となり、債務超過に陥ることが多いため、倒産手続きを進めます。通常は、破産や民事再生手続きが選択されます。

注意すべき点

1 詐害行為取消しのリスク:

・倒産した会社が債権者を害する目的で不当に安価に資産を譲渡した場合、債権者から「詐害行為取消し」を申し立てられるリスクがあります。適正な価値で資産を譲渡し、債権者に不当な損害を与えないように注意が必要です。

2 会社法や倒産法の違法行為の回避:

・事業譲渡や倒産手続きが、債権者の利益を不当に害する形で行われると、会社法や倒産法の観点から違法と判断される可能性があります。特に、役員が個人的に利益を得る目的で不正な譲渡を行うと、刑事責任が問われることもあります。

3 債権者との調整:

・事業譲渡を行う前に、債権者との事前調整が重要です。債権者を納得させるためには、譲渡後の会社がどのように運営されるのか、負債の返済にどのように対応するのかを明確にする必要があります。

4 税務面での注意:

・事業譲渡には税務上の問題も伴います。譲渡利益に対して法人税が発生することがあり、その場合、譲渡価格が適正であるかが税務調査の対象となります。

その他の注意点

・取引先や従業員への影響:

事業譲渡に伴い、取引先や従業員の処遇についても考慮する必要があります。新しい会社との取引がスムーズに移行できるか、従業員の雇用が維持されるかどうかも重要な要素です。

・株主や役員の責任:

倒産手続きが始まると、旧会社の役員や株主がその行為に責任を問われる可能性があります。特に経営判断の透明性と合法性が求められます。

この手法を実施する場合、法的な手続きやリスクの回避を専門家と緊密に相談しながら進めることが極めて重要です。

 

新設会社への譲渡

新たに会社を設立し、その新会社に事業を譲渡して元の会社を倒産させる手法は、実務においてもよく利用されますが、慎重に進めなければ法的リスクや信用リスクが高まる可能性があります。この場合に特有の注意点を以下に示します。

注意すべき点

1 詐害行為のリスク(詐害行為取消権)

・新会社を設立して旧会社の事業を譲渡する際、債権者に損害を与える意図で行われたと見なされると、債権者が詐害行為取消しを申し立てることができます。特に、旧会社が資産を新会社に安価で譲渡し、負債のみが旧会社に残る場合、このリスクが高まります。譲渡価格が適正であること、債権者を害する意図がないことを証明できるように、譲渡に関する書類を適切に整備することが重要です。

2 関連会社間の取引の透明性

・旧会社と新会社が密接な関係にある場合、たとえば役員や株主が共通している場合、第三者(債権者、裁判所、税務当局など)から「実質的に同一会社による事業継続」とみなされる可能性があります。これにより、債権者からの異議申し立てや法的問題が生じるリスクがあるため、譲渡手続きや価格設定は透明性を持たせることが必要です。

3 旧会社の負債処理と債権者対応

・新会社に事業を移転した後、旧会社の債務が適切に処理されていない場合、旧会社の債権者が新会社に対して責任を追及する可能性があります。特に、新会社が実質的に旧会社と同じ事業を継続している場合や、旧会社の従業員や資産をそのまま引き継いでいる場合には、「会社の同一性」が問題になることがあります。このため、債権者との事前協議や、負債に対する清算計画が明確であることが重要です。

4 「実質的な事業継続」とみなされるリスク

・旧会社の業務が新会社で継続されると、裁判所や債権者から「実質的に同じ事業を別の会社で行っている」と見なされる場合があります。この場合、旧会社の債務を回避しようとする意図があると判断され、法的責任が新会社にも及ぶ可能性があります。例えば、新会社が旧会社の顧客や従業員、資産をそのまま引き継ぐ場合、このリスクが高まります。

5 税務上の問題

・新会社に事業を譲渡する場合、税務上の評価額に基づいて譲渡が適正に行われているかが重要です。不当に低い価格で譲渡が行われると、税務当局から調査を受けるリスクが高まります。また、事業譲渡に伴う消費税や譲渡所得税などの税務面の処理も適切に行う必要があります。

6 新会社の信用リスク

・新設会社に事業を譲渡した後、取引先や金融機関からの信用を維持できるかが課題となります。特に、旧会社の倒産が関係者に知られると、取引先や従業員の信頼が低下し、新会社との取引が難しくなる場合があります。このため、事業譲渡の際には、事業の継続性や新会社の経営計画について十分に説明する必要があります。

7 旧会社の清算計画と法的整理

・旧会社が倒産手続きを進める際、清算手続きや破産手続きが適切に進行することが重要です。旧会社の役員が新会社の役員に就任している場合、旧会社の清算手続きが適切に行われないと、新会社への影響が出る可能性があります。また、債権者が旧会社の清算を不満に思い、法的に異議を申し立てることもあり得ます。

実行時のポイント

・譲渡価格の適正性を確保:

新会社への事業譲渡に際して、専門家の評価を受け、適正価格で譲渡することが重要です。これにより、詐害行為や税務上の問題を回避できます。

・透明性を確保する:

旧会社と新会社の関係や、譲渡の目的、譲渡後の事業計画を明確にし、ステークホルダーに説明することで、リスクを軽減します。

事前に債権者と協議:

債権者との事前協議を行い、譲渡後の負債処理や倒産手続きに関して合意を得ることが、法的リスクを低減する上で重要です。

以上の点を踏まえ、事業譲渡の手続きや新会社の設立は、慎重に法的および税務的アドバイスを受けながら進める必要があります。

 

事業再生には様々な手法があります。対象会社の財務状況、事業内容、取り巻く環境等により、対応すべき内容が異なります。まずは現在の状況を把握することが重要です。

現状の把握が人的な面や時間的な面で実施できない場合は、「3期分の決算書」「借入一覧」「事業内容の資料」をご提供頂ければご相談に応じることは可能です。

帝国データバンク報告

倒産件数が6半期連続で増加

2024年10月8日に「帝国データバンク」から、「全国企業倒産集計・2024年度上半期報」が公表されています。今回、その概要を紹介します。

 

公表資料はこちら

 

倒産件数の推移

2024年度上半期の倒産件数は「4,990件」(前年同期:4,208件、18.6%増)で、上半期としては2013年度以来の 5,000件に迫る件数を記録しています。

半期ベースでみると、2021年度下半期(2,978件)以降、6期連続の増加になっています。

集計対象は、「負債1,000万円以上、法的整理による倒産」で、私的整理や廃業・解散等を加えると事業を停止した企業数は更に多いです。

倒産件数の移動平均(12ヶ月平均)

倒産件数の月毎の移動平均を次に示します。これを見ると、コロナ支援の「ゼロゼロ融資」が終了した頃から倒産件数が増加していることがわかります。

ホームページには、公表資料のポイントとして、

・業種別、規模別の倒産状況

・要因別の倒産の推移

  (1)物価高倒産

  (2)ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産

  (3)後継者難倒産

  (4)人手不足倒産

を紹介しています。

 

 

今後も生き延びるには

 

きちんとした経営を行う

 

帝国データバンクの報告の中に、「粉飾倒産」が急増、年間最多を更新へという内容も掲載されています。

2024年の粉飾決算は9月までで「74件」判明し、集計を開始した2016年以降で同期間(1月~9月)における最多を更新したとのことです。

多くの金融機関が粉飾決算を見抜けなかったケースも多く、金融機関に借入金の返済猶予や追加支援を申し入れた際に発覚する事例が相次いでおり、今後も増えると思われます。

以前に粉飾決算に関する記事を掲載しているので参考にして下さい

「コンプライアンス違反の倒産増加」の記事はこちら

「日本弁護士会」がまとめた「中小企業のコンプライアンス・チェックシート」も紹介しています。

 

 

事業ドメインが大事

既存事業では、成熟期あるいは衰退期に入っていて、今後の成長が難しい場合があります。ほとんどの企業は「今後の展開」について不安を持っていると思います。

現在、多くの中小企業が将来に対して不安を抱いている背景には、急速な市場環境の変化や競争の激化、さらには技術革新によるビジネスモデルの変化があります。不安を解消するためには、目の前の問題に対処するだけでなく、長期的な視点で自社の立ち位置を見直し、意味のある事業計画を立てることが重要です。事業計画を立案するための前段階として「事業ドメイン」の再設定が必要です。

 

事業ドメイン」とは、企業が「何を(商品・サービス)」「誰に(市場・顧客)」「どのように(生産や販売の展開方法)」提供するのかを定義するものであり、企業活動の基盤となるものです。しかし、市場の変化や顧客のニーズの多様化に伴い、一度設定した事業ドメインが時代になることもあります。これを放置すると、企業は競争力を踏まえ、経営の持続が困難になるリスクが生じます。

 

中小企業が将来の不安を解消し、持続的に成長するためには、まずは自社の「事業ドメイン」を再設定することが重要です。そして、この事業ドメインの再設定を基盤とし、実効性のある事業計画を立てることで、経営の安定性を向上させ、発展させることが可能になります。

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